極上の音色

作者: kuboshiori · 難易度: 難問 · 評価: 7.0
#サイコホラー#意味怖#サスペンス#伝統芸能#猟奇的

問題文

「この皮も、ようやく良い張りになってきたね」 師匠の冷たい指先が私の背骨をなぞり、腰のあたりで優しく止まりました。 舞台からは、割れんばかりの拍手が聞こえてきます。それは、姉弟子が遺した三味線による、初めての『黒髪』の演奏でした。その音色はあまりにも艶めかしく、とても猫の皮とは思えない湿り気を帯びていて、客席の旦那衆を陶酔させていました。 うっとりとした表情の師匠は、私に温かいお汁粉を手渡してくれました。それは、姉弟子の好物でした。 私はお汁粉を口に運びながら、いつか自分が舞台に立つ日を夢見ていました。 だから、鳴り響く歓声の裏で、包丁を研ぎ始めた師匠の呟きを聞き逃してしまったのです。 「あの三味線はもうバラしなさい。来月の新曲には、あの『白狐』を使うから」
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