存在しない笛吹き
問題文
ある民俗学者の遺品から、昭和初期に録音されたカセットテープが見つかりました。
ラベルには『夜神楽・鬼降ろし』と手書きされています。
テープに吹き込まれていたのは、狂气を感じさせるほど激しい太鼓の独奏でした。
学者の日記には、こう书かれています。
『太鼓の合間に聞こえる笛の伴奏が実に見事だ。か細く、しかし悲痛に震えるその音色は、まるでむせび泣く亡霊のようで、深く胸を打つ』
ですが、その音源を聴いた私は、背筋が凍りつきました。
当時の写真資料を確認すると、舞台に立っていたのは、狂ったように太鼓を叩く男が一人だけだったのです。
そして、演奏の直後に沸き起こった村人たちの揃った大歓声は、何か『重い袋』が落下するような鈍い音を、綺麗にかき消していました。
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