消えた大名と薄葬の屍

作者: kuboshiori · 難易度: 難問 · 評価: 7.0
#歴史ミステリー#サスペンス#悲劇#意味怖#洒落怖

問題文

元和元年、天下を掌握した戸田政嗣は、敵对する葛城家の居城を攻め落とした。本丸の霊廟殿から火が上がり、炎が収まった後、政嗣は一具の焼死体を見つけ出した。顔は判別できなかったが、身につけていた鎧の残片と体格は、若き当主・葛城旨徳のものと一致していた。政嗣は無言のまま、その遺体を「前代の大名」として丁重に葬るよう命じた。 しかし、そこには三つの奇妙な事実があった。 第一に、焼死体の左手は五本の指が揃っていたが、右足首には古い骨折の奇形があった。 第二に、落城の混乱に紛れ、寺社を管理する「僧録」の署名入りの通行証を持つ古い荷車が城外へ逃れていた。積まれていたのはただの仏典だった。 第三に、霊廟の灰の中から、旨徳の幼子「若丸」の名が刻まれた、半分溶けた銀の魔除け鈴が見つかった。 それから数年後、三つの不審な噂が幕府に届く。 ・陸奥の地で「円葉」と名乗る僧が説法を行っているが、彼の左手には常に黒い革手袋がはめられており、小指が欠損しているという。 ・都で、幕府が禁じた葛城家の私年号「康昭」が記された経本が密売され、その買い手は元葛城家家臣の下屋敷だった。 ・幕府が編纂中の歴史書の一頁に、細筆でこう書き加えられていた。 「陸奥の僧はかつて落城の戦を語り、こう嘆いた。あの時、楊王孫の如き『薄葬(はくそう)』にすればよかったのだ、と」 これを見た政嗣は、無言で「薄葬」の二文字に墨で丸をつけた。
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