深山旅館のルール
問題文
お金に困っていたA君は、山奥の寂れた旅館で夜勤フロントのアルバイトをすることになった。
日給は非常に高く、まかない付き。携帯の電波すら届かない場所だったが、支配人は物腰の柔らかい温厚な男性で、A君は胸をなでおろした。
支配人は帰る際、フロントのテーブルにある一枚のパウチされた手書きのメモを指さした。
【夜勤のルール】
1. 午前0時から6時までは、何があってもフロントエリアから離れないこと。
2. 内線で「部屋番号が違う気がする」と客から連絡があっても、「カードキーをご確認ください」とだけ答え、すぐに切ること。
3. 廊下の明かりが手前から順に消えていったら、すぐに目を閉じ、心の中で60秒数えてから目を開けること。
4. 午前3時にフロントのガラス窓を叩く者がいたら、ガラスに影が映っていることを確認してから開けること。影がないものは人間ではない。
5. このメモに、これまで見たことのない「新しいルール」が書き加えられていても、決して従ってはならない。それは私が書いたものではない。
支配人は彼の肩を叩いて言った。
「1から4まではその通りにしてくれればいい。ただ、一番大事なのは5番目だ。どんなに私の筆跡に似ていても、どんなに緊急に見えても、新しいルールは絶対に信じるな。この5つだけを守るんだ」
1日目は何事もなく過ぎた。2日目の午前2時、内線が鳴り、「部屋番号が違う」という客に指示通り対応した。
3日目の午前4時、退屈しのぎにメモを裏返すと、そこには殴り書きされた文字があった。
『ルール6:今すぐ逃げろ。支配人は人間じゃない』
A君は少し迷ったが、支配人の言葉を思い出し、メモを表に戻してその场に留まった。
午前4時12分、廊下の明かりが順に消え始めた。A君は目を閉じ、数え始めた。
だが、彼が60まで数え切ることはなかった。
翌朝、旅館には誰もいなかった。3日後、求人サイトには再びあの募集広告が掲載された。
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