切り落とされた場所
問題文
「壊れたものは直せ。直せないなら燃やせ。だが、途中で切り落とすことだけはするな。失われた部位を求める『幻肢痛』が、生者を狂わせる」
大工だった祖父のその言葉が、今になって頭をよぎる。
上京して住み始めた、わずか三畳の格安アパート。大家が気を利かせて敷いてくれたという三枚重ねの分厚い敷布団で眠る夜は、いつも寝苦しかった。天井が妙に遠く感じられ、胸の上には目に見えない巨大な石が置かれているかのような、息苦しい圧迫感に苛まれていたからだ。
今朝、シーツを替えようとした際、ベッドの角で指を深く切った。見つめると、そこには新しく、綺麗に切り落とされた四本の支柱の断面があった。
その瞬間、祖父の言葉が脳裏で弾けた。私は、その『重み』の正体を理解してしまった。
かつてそこにあった場所が空気に変わってしまったから、それは、私の真上に横たわるしかなかったのだ。
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